暮らしと珈琲
岡山から全国を惹きつけるブランド
トレンドを追い、カルチャーを残す。「暮らしと珈琲」が届けるもの。
年間を通して気候が温暖で、自然も豊か。穏やかな人が多いこの街で、全国的に人気を誇るロースター 「暮らしと珈琲」。
岡山を起点にYoutubeやSNS、そして”暮らしと珈琲らしい”コーヒーで日本中のファンを魅了する、同社創業者の脇山さんにお話を伺った。※文中敬称略。
コーヒーとの出会い、没頭。学生アパートの一室から。
今ではYoutube登録者数4万人を超える人気ロースターにまで登りつめた暮らしと珈琲だが、そこに至るまでの過程は平坦なものではなかった。
創業者の脇山は、山口県下関生まれ。忙しない漁師町の出身で、コーヒーとは無縁の生活を送っていた。そんな脇山がコーヒーに出会ったのが大学生の頃。当時まだ日本に進出して間もないスターバックスで飲んだ1杯のコーヒーが、彼をコーヒーの世界に引き込んだ。
「今まで飲んだコーヒーと違う。素直にそう感じました。」
スターバックスでコーヒーの味に衝撃を受けた脇山は、全国各地からコーヒー豆を取り寄せ、狭い学生アパートの一室でコーヒーの研究に没頭した。後になって気付いたことだが、その時美味しいと感じていたコーヒーこそが、まさにスペシャルティコーヒーと呼ばれるグレードのコーヒーであった。
「当時はスペシャルティコーヒーという言葉が出始めた走りの時期でした。今みたいにインターネットでコーヒーを学ぶ環境が今ほど充実してなかったので、とにかく本を買ってコーヒーを勉強しました。そして、最終的にはコーヒーで自分がビジネスできたらいいなと思うようになりました。ただ大学卒業後、社会人経験を積まずに起業するのはあまりにも経験が足りないと考え、一度スーパーマーケットに就職する道を選びました。理由は、コーヒーでビジネスをすることは決めていたので、仕入れだったり、値付、販売、スタッフのマネジメントだったり、全ての経験が積める環境がそこだと思ったのがきっかけです。当時は、入社1年目でも商品の買付に携わり、販売もさせてもらったりもしました。」
そこで3年間商売のイロハを学び、岡山を拠点に自身のお店を作ることを決心した。なぜ地元下関ではなく岡山だったのかを尋ねると、岡山のコーヒー文化が豊かで、 脈々と日本コーヒーカルチャーの流れを受けて独自の進化をしてるエリアだったからと脇山は語る。
焙煎機を車に積み込んで、全国を移動販売。暮らしと珈琲の誕生まで。
すぐに店出すのはリスキーだと考えた脇山は、イベント出店という形で商売をスタートさせた。同時にWEB系学校に通い、インターネット通販のことを学び、ネット系のイベントにも積極的に取り組んだ。
「とにかく初期はスモールスタートでしたが、営業活動だけはアグレッシブでした。全国各地のイベントに出られるものはとにかく出ていました。もちろん、誰かに誘われることは少なかったので、自分で探して問い合わせして、頼み込んでお願いしてました。焙煎機も、全国のイベントに持っていくために、車に積んでイベント毎に焙煎して、次の日には移動してまた焙煎しての繰り返しでした。ちなみにその移動販売スタイルの頃から、現在の焙煎士なつみ店長とは一緒に働いています。」
今の暮らしと珈琲からは想像も付かない時代。同時に卸販売の営業にも積極的に取り組んでいた。そうして当時愛用していたディスカバリーの焙煎機では限界になってきた頃、最初の店舗トスティーノコーヒーをオープンする。
「今の暮らしと珈琲の前身のブランドですね。当時は、まだスペシャルティコーヒー黎明期で、まだまだコーヒーの可能性が未知数だったのを覚えています。私自身、当時からスペシャルティコーヒーに特化しようと思っていたわけではなく、美味しいコーヒーを扱っていたらスペシャルティコーヒーだったという結果でしたね。気づけば全てのラインナップがスペシャルティでした。」
今の暮らしと珈琲という名前に変わったのは、量販店への珈琲提案や、岡山駅中への出店が立て続けに続き、大きな焙煎機を置ける場所に移設することになったことがきっかけである。トスティーノコーヒー時代は、卸販売が好調でとにかく焙煎量が多かったが、もっと直接消費者の方にフォーカスした美味しい珈琲を届けようとリブランディングを決意した。そうして、トスティーノコーヒー時代からのコンセプトであった、“コーヒーのある豊かな暮らし”から、暮らしと珈琲が誕生した。
日本から世界へ。暮らしと珈琲のこれから。
日本のコーヒーカルチャーを海外に発信することに力を入れていきたいと語る脇山。
「リアルでの体験提供を、まずはアジア諸国に発信したいと思っていて、今世界のコーヒーカルチャーの中心になりつつあるアジア圏に、日本のコーヒーカルチャーを発信する機会っていうのを作っていきたいなと思っています。それは、Youtubeで発信するだけでは不十分だと思っていて、それはイベントであったり、もしかしたら実店舗かもしれないですが、 コーヒーは体験するものなので、発信する以上その現地の状況を知らないといけないと思っています。実際に私たちが日本で飲んでるコーヒーで、私達がが勧めたいものを直接飲んでいただけるような、場所や体験を、今後アジアで展開したいなと思っています。」
「また、スペシャルティの最新のコーヒーカルチャーももちろん追っていく一方で、各土地に根ざしたコーヒーカルチャーを伝承していく動きが出てくることに期待しています。例えば、日本のネルドリップや、ブラジルのカフェジーニョなど各国各地にローカルのコーヒーカルチャーがありますよね。それは、今はコーヒー業界のメインストリームでは無いかもしれませんが、それまで各地でコーヒーを広めて、積み上げてきた大切なものだと思っています。それを次の世代にも繋げていきたいと考えていて、それをすることが私の義務だと思っています。そうでないと、メインストリームのコーヒーカルチャーだけだと、世界中が画一化されて面白さに欠けると思っています。だからこそ、ビジネスとは関係ないかもしれませんが、そこは行動していきたいと考えています。」
岡山だけでなく全国から愛されるブランド、暮らしと珈琲。そんな彼らのコーヒーを是非試してみてはいかがだろうか。
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